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松元 皆さんこんにちは!ふれ愛シアター「まだらマンダラ」公演まであとひと月になりました。新屋さんや小林さんは稽古に余念が無い日々ですが、本日は大変忙しい中を「まだらマンダラ」の作者であり演出家の鶉野昭彦さんにも加わって頂き、まさに夢の座談会が実現しました。お芝居の見どころ、制作秘話など私も突っ込んでお聞きしたいと思いますので皆さん、ざっくばらんにお話ください。
◆企業人として画期的な取り組み
鶉野 私、企業人がお芝居に関わっていく意義を考えていました。企業も人との関わり、人の心をどう捉えるか、という事を追求されていると思います。その観点から見る時、松元さんのこれまでの私達との関係、また今回の「ふれ愛シアター」開催に大きな意義と企業人としての理念を感じます。
また、ご自身も「新屋英子一座」にご出演されて、人間てなんやろなあ、演じながら体感されたと思うのですよ。見えたもの、得たものからお聞きしたいと思います。
松元 私がお芝居に出て体験できたことはいっぱいありました。おとなから子どもまで、経歴や肩書きは関係なくて、まさに横一線で稽古はスタートする、人生において初心に帰ったつもりで取り組めました。そして最後は努力をした者だけがわかる歓び、嬉しさ・・これが堪らないですね。また、稽古期間を通じて学生やいろんな人とのふれあいが出来、価値観や考え方を知りそれは貴重な事だと思います。また、新屋さんを通じて私は人間が変りましたから、人権やひとを大切に考えなければいけないことも、私自身の課題をいっぱい貰っています。芝居はひとを変える力があるし、ひとの能力を高めるしそんな気持ちをご協力いただいたたくさんの企業の方達におわかり頂けたらと思います。
新屋 いやあ、10年前、最初はびっくり仰天したんですよ。なんせ大きな運送会社の社長さんが私に会いたいと言うたはるとお聞きして・・。正直今までお 付き合い頂いた人達とは違う部類の人でしたから・・。(笑)労働組合や行政の方とお会いしてお芝居を進めたことは山ほどありますが、松元さんとの出会いは衝撃的でした。でも、私達のお芝居が大きく広がる要素であったんですよね。後援会長にまでなって頂いて小林ともども更に頑張って歓んで頂くいいお芝居になるよう努力したいと考えています。
松元 では、「まだらマンダラ」の見どころ等を皆さんからお話ください。作者であり演出の鶉野さんからお願いしましょう。
◆新屋英子の半生と重ね合わせて
鶉野 俳優座の岸輝子さん、千田是也さんの夫人でもある方なんですが、その方が高齢で認知症の症状が出始める。セリフが出てこなくなる。それでまた時折過去に自分がしゃべった名セリフを喋り続けたりすることがありました。このエピソードをいつかお芝居にしたいと考えていました。それと新屋自身が高齢者、同じ年代になってきて差し迫った問題でもあるんですよね。だから是非とも新屋の半生と重ねた作品を作りたいと考えました。また、小林は看護師の経験があって、事実に基づいて、私がふたりから聞き取りをしながら書いた物語です。特に後半部分の高齢者が置かれた状況はりアルな話です。もうひとつ、ほんとうは辛くて苦しい話なんですが、お客さんが心から笑って楽しく観てくれる。それはまさに新屋のユーモラスで暖かいキャラクターが見事にこのお芝居に溶け込んでいて、それに支えられている部分って大きいと思うんですよ。
それが東大寺八千代の雰囲気を作っています。それにまたムキなって体当たりして行く小林のみずみずしさが溢れていて、楽しみながらぐっと心に沁みるお芝居になったと思います
◆悲しみ、苦しみの裏返しとしての喜劇
新屋 しかめっ面したお芝居でなくて、私は大喜劇をやりたいと考えたんです。はちゃめちゃで大笑いできるお芝居が生きていく力になると考えました。
松元 でも、本来認知症が進行していく道筋ってとてもシリアスではないですか。それを喜劇にしていくことは難しくなかったですか?
新屋 喜劇というのは、悲しみとか苦しみの裏返しだと思うのですね。悲しみ辛さを別の角度から捉えて表現することが喜劇だと思うのです。人間を描くという事は、鏡の両面で私は悲劇と喜劇は同じだと思っています。悲しみをえぐっていけばえぐっていくほど笑わざるを得ないおかしさがある。また残酷さもある・・。
小林 私は、初演が終了した夜、めずらしく父から電話をもらいました。日頃誉めてくれない父が、今日の「まだらマンダラ」はよかった、楽しいし、おばあちゃんの事も考えさせられた。と語っていて、「まだらマンダラ」には、どこの家庭でも起りそうな、また切実な課題というものを突きつけている素晴らしいお芝居であると改めて思いました。初演の舞台の上でもお客さんの反応がビンビン来て皆に共通する普遍的なものがそこにあると思うのです。また、私自身は、新屋さんの経験談に基づいて描かれているので緊張もしました。特に、木村少尉殿のところは、実際に木村少尉殿の夫人が見に来られているのを聞いていましたので、いやらしくやり過ぎないように(笑)心がけました。
◆ラブロマンスは本当!(?)
鶉野 僕は木村少尉殿と新屋がほんまはできてたんじゃないか、と今でも思ってるんです。(笑)蚊帳の中で何もなかったとは思えない(笑)
新屋 そんなことありません!(大声)
松元 木村少尉殿の話は、最新著の「女優〜新屋英子」でも描かれていましたが、純真無垢な軍国少女の新屋さんが、木村少尉殿の影響を受けて社会主義だとか反戦だとか学ぶようになった。戦後の新屋英子の基礎を作るような影響を与えるような人と推察できます。そんな人と何もなかったとは・・私の経験からもにわかに信じがたい・・。(笑)
新屋 神に誓って、天地神明に誓ってそんなことはありません!
この座談会は私を責める会ですか!(笑)
松元 では、質問を変えてお尋ねしますが、お芝居の中で家を出て行った演出家である元夫が若い女優と、できていた事実を知り東大寺八千代が若い女優を詰問する場面がありますが、あれも事実に基づいたお話ですか?
鶉野 ・・・・あれはフィクションですよ(笑)
新屋 でも残念ながら私の人生では、夫の鶉野はそんなことは無かったですね。あってもよかったんですがねえ。(笑)
小林 何か鶉野先生先ほどから急に口数が少なくなりましたね(笑
◆描きたかったのは愛
松元 チェーホフのオリガのセリフ、過去、大女優の地位を確定したあのセリフが言いたくてしかたないが、認知症が進行してきて、言えない、でも最後にやっと言える。あれが最高の山場ですよね。
鶉野 そのきっかけとなったのが、自分を捨てて出て行った演出家、あきら。八千代は愛用のショールを誰に貰ったのか思い出せなかったが、ある夜更けラーメン屋のチャルメラの音が聞こえてくる、その瞬間それはあきらから貰ったショールであることを思い出す!!と一気に記憶が蘇ってくる。棄てられても好きな男、あきら。ショールを首に巻いた時、オリガのセリフを思い出して、一気に自分の最高の当たり役の名ゼリフを間違わずに最後まで見事に言いきる!!幸せの絶頂、その絶頂の中で八千代は死のうとする。それを体を張って止めるクリスチーヌ、愛の物語なんですよ。
この世はつらい苦しい事ばかり、でも、もし望みがあるとするならば、それはやっぱり手垢のついたありふれた言葉、「愛」なんでしょうね。
小林 終盤にかけては本来は座ってもっと静かな場面だったんですが、稽古を重ねるうちだんだん激しくなっていって初演本番前日の夜9時くらいから演出に頼んで動きを変えてもらい、新屋さんと稽古を始めました。
鶉野 その稽古は、まさに女優2人の激しい魂のぶつかりあいでした。今回もいいものをお見せできると確信しております。
小林 松元さんもすっかり「新屋英子一座」の名優で、私達と何度も舞台を踏みましたが、お芝居に取り組む姿勢には敬服しています。今年のセーラー服姿は驚きました。役者だなあと感心したんです。
お芝居とお仕事、その意義、どうお考えなのでしょうか?
松元 新屋さんからお誘いがなければお芝居はしませんよ。その生き方が好きですから、お手伝いができればいいなあと言うこと。それに、一応世間で社長をしている私を真剣に怒ってくれる人はいないんですね。また自分が勉強する機会もないのです。私にとって世の中で怖いものが必要だと考えています。それは新屋さんそのものなんです。自分の一番弱いところです。
お芝居は純粋に楽しいです。いろんな条件で毎年格闘するのですが気がつけば一座に出ています。
小林 昨年の「いくえ号」に引き続き今年は「まだらマンダラ号」をしかも10トン車で作って頂いたり、今回の公演ではまさにグループ会社が社員さん総出でチケットの販売に歩いてくれていると聞いていますが、松元さんの今回の「ふれ愛シアター」への思いもお話ください。
◆刺激のシャワーを!意識は必ず変わる
松元 企業の社会的責任、社会貢献が声高に語られていますが、人権問題でやらなければならない事はヤマほどあると思います。00年に「身世打鈴」公演を開催してから久しぶりの開催になります。今回は前段として交通事業者としての社会的使命について北口末広さんにご協力を頂き協力関係にある各メーカー企業とともに高齢者問題について語り合う場となります。新屋先生に名づけて頂いた「ふれ愛シアター」も東陽運輸グループの恒例行事として、これから回を重ねていきたいと思います。私どもの会社の従業員もお芝居を通して刺激のシャワーをかけ続けていきたいとい思っています。地道な取り組みですが人間の意識は変ってくると信じています。
小林 そのわりに今回は大きな仕掛けだとはおもいますが・・。
松元 いえいえまだまだ!メーカーも私達ももっと変らなければ!本来の社会的使命は果たせると思っていません。そういう意味ではこの「まだらマンダラ」は観た時に、これや!と思ったくらい皆さんに観て欲しいお芝居です。きっと歓んでいただけるに違いないと確信しています。避けては通れない課題を考えるいい機会だと思います。
新屋 松元さんは新屋英子一座で何作出演されましたか?
松元 もう4作品ださせて頂きました。
小林 初出演の時の「猟師姿」は印象的でした。稽古中も真剣そのもので、いつもぶつぶつセリフの稽古をしていて、役者の鏡みたいな人だと思いましたよ。
鶉野 そのとおりですね。私も企業で成功する人は、何をしても半端じゃない、熱心な稽古振りは他の役者を引っ張って行く力になります。また、存在感溢れる役者ぶりはあっぱれでした。
新屋 今年のヤクザ屋さんは本職も顔負けの迫真の演技でしたし、昨年の劇団オーナーも等身大で松元さんのカラーがよく出ていました。
松元 いやあ、誉められてるのかどうか、わからなくなってきましたが・・。出演していて歓んで頂けるなら出たいと思っています。
それでは、時間と紙面がなくなってきましたので再び出演のお二人から意気込みをお聞かせください。
◆楽しんでください!
新屋 全国各地で平和を願い、差別をなくそうとする運動の先頭に立っておられる北口さん。私は北口さんと同じ気持ちで3000回のひとり芝居をしてきたように思います。松元さんや北口さんと一緒に作り上げる事ができた「ふれ愛シアター」にご期待ください。
小林 高齢化していく人々を家族が国が、企業がどのようにサポートしていくのか、今問われているのだと思います。そんな問題意識をもっていますが、「ふれ愛シアター」はタイムリーな取り組みだと思います。この社会で真にバリアフリーが根付くよう願っています。私はめざせ!新屋英子。3000回の舞台が踏めるように頑張りたいと思います。
松元 本日は忙しい中、有難うございました。また、ご参加の皆さん、ごゆっくりとご鑑賞ください。本日はほんとうにありがとうございました。
(構成・文責 道野隆)
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